眼鏡を作りたいとき、あなたは眼鏡屋さんに直接行きますか?
それとも、眼科で処方箋(しょほうせん)をもらいますか?
そもそも初めて作る人では、”眼鏡の処方箋”すら知らないかもしれませんね。
眼鏡の処方箋とは、眼鏡を作るときに必要なデータが記載された用紙です。
それをもとに、眼鏡屋さんは眼鏡を作るわけです。
では、眼鏡屋さんに処方箋を持参しなければ眼鏡は作れないのでしょうか?
視能訓練士の視点でわかりやすく解説していきます。
処方箋がなくても眼鏡は作製できる。ただし例外あり!
結論を言うと、処方箋がなくても眼鏡屋さんに行けば眼鏡は作製してもらえます。
処方箋がない代わりに、眼鏡屋で簡易な検査をして必要なデータを取ります。
眼鏡屋によりますが、眼鏡のプロである眼鏡士や眼のプロである視能訓練士が検査をする場合もあれば、無資格の方が検査をする場合もあります。
ただし、以下のような例外は眼鏡屋に行く前に眼科で処方箋をもらった方がベターと考えます。
そもそもこのような例外では、眼鏡屋から眼科で処方箋をもらうように言われるかもしれません。
それぞれ詳しく解説していきます。
例外1.子どもの眼鏡【特に初めての眼鏡】
幼い子どもは大人の眼と違い、眼の調節力(近くを見る力)が強く、特に緊張状態だと調節力が過剰に働くため本来の眼の状態が分かりにくくなります。
そのため、眼科で視能訓練士が時間をかけて慎重に検査することが大事です。
年齢や状態によっては、目薬をさして行う特殊な検査をしなければ本来の矯正度数がわからない場合があります。
よって、眼鏡屋ではなくはじめから眼科で検査することが近道となるでしょう。
子どもと言ってもどこまでが子どもなの?と思うかもしれません。
人にもよりますが、小学生までは眼科で検査するのが間違いないです。
少なくとも未就学児は、必ず眼科で検査しましょう。
的確な度数ではない眼鏡をかけた場合、「弱視(じゃくし)」という視力が出ない病気になったり、眼精疲労の症状が起こりえます。
子供は大人と違い、視力が発達段階にあるので常に的確な矯正度数の眼鏡を装用することが必須です。
例外2.左右の見え方に差がある
左右の眼の度数や視力に極端な差がある場合、専門的な知識を持った検査員が処方箋を作製した方が良いでしょう。
左右の差が大きい場合、眼鏡をかけると見える像にも左右差が生まれます。
すると脳の処理がうまくいかず、身体に異常をきたす場合があるからです。
よって、度数の細かな調整をして”かけられる眼鏡”の処方箋を作る必要があります。
例外3.眼の病気がある
眼に病気があると、視力が出にくかったり、度数の変動があったりと本来の眼の状態を把握するのが困難です。
眼科で必要な検査をした後で、眼科医の指示のもと眼鏡の度数を決定するのが良いでしょう。
病気で見えにくいのに、「眼鏡が合っていない」と眼鏡屋に行くケースが非常に多いです。
「同じ眼鏡なのに、前より見えにくいなぁ」と感じる場合は、病気の可能性を疑いましょう。
眼鏡屋に行く前に眼科を受診することで、2度手間になることも防げます。
眼科で眼鏡の度数チェックをしてもらうことも可能なので、「眼鏡が見えにくくなった」と素直に伝えてみましょう。
逆に眼の病気があっても、かかりつけ眼科医に「眼鏡屋で眼鏡を作っても良い」と許可されている場合は、そのまま眼鏡屋で作製してもらって良いです。
作る場所を間違えると2度手間にもなる?視能訓練士の実体験
処方箋がなくても眼鏡を作ることができるのですが、例外を知らずに眼鏡屋で作ると2度手間やトラブルになることもあります。
実際に眼科で働いていた私は、何度か眼鏡屋とトラブルになった経験があります。
小学校低学年のお子さんとお母様が来院し、初めての眼鏡を眼鏡屋で作ったのにきつくてかけられないとの主訴。
測定してみると、初めての眼鏡ですが強い度数そのままを入れていました。
初めての眼鏡は、大人でもまずは眼鏡に慣れるために本来よりやや低く度数を入れることが多いです。
眼鏡に慣れ、度数が弱いことで見え方に不満が出てきた場合はその後徐々に強めていく…というのが王道コース。
ましてや、子どもだとなおさら眼鏡をかけることに慣れるのが困難なことが多いのです。
結局、度数を弱め「かけられる眼鏡」の処方箋を出したところ、「これならきつくない」と言って眼鏡をかけてくれました。
こういったケースでは、眼鏡を作りたい方が2度手間になるという残念なことが起こります。
視能訓練士としては、無理なく見える生活をすることが何より大事なのです。
そして、眼鏡を嫌いにならずに相棒になってほしいと願っています。
眼鏡をスムーズに作製するには、眼鏡屋と眼科がうまく連携することが課題かもしれません。
眼鏡屋と眼科の目的が違う
そもそも眼鏡屋と眼科の「眼鏡を作る目的」は、全く違うのです。
眼鏡屋は「その人がよく見える眼鏡の度数を決める」。
つまり、見えにくい人がよく見える度数で作るのが眼鏡屋さんです。
一方で眼科は「その人に最も適切な度数を決める」。
その度数がその人に適切かどうかを、年齢や持病、その後の状態も予想しながら総合的に決めます。
その目的は、似ているようで全く違いますし、どちらが正解ということはありません。
眼鏡屋で作った眼鏡がきつくてかけられないという人が眼科に来ることもあれば、眼科で処方してもらった眼鏡が見えにくく眼鏡屋に来ることもあるでしょう。
結果的に、満足するかはその人しかわからないのです。
眼鏡を作りたい人がそれぞれの目的が異なることを知った上で、どこで眼鏡を作るのか決めることこそが納得がいく眼鏡が作れる近道かもしれません。
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